第9話 オーブ

著:御子絵 ◆6scG3/0sFE  時刻:21:54:26

30 :御子絵 ◆6scG3/0sFE :2010/08/20(金) 21:54:26 ID:BjNlgK1Z0
【第九話】

≪オーブ≫
その頃私は路上ライブをしているユニットの彼ら(A,B)のファンでした。
週3くらいで様々な場所で午前と午後、彼らは歌っていました。
Aは歌とギターとハーモニカ。もう一人のBは歌とギターとタンバリンとパフォーマンス。
彼らは同じ町の他の路上ミュージシャンと違って、いつもファンが周りを囲んで一緒に歌ったり、
手拍子したり、踊ったりとファンの結束力も強くて、いつも笑いの耐えない楽しいライブでした。
私もカメラ好きの友人と行ったり、一人で行っては楽しいひとときを過ごしていました。

その日は初めての町の駅前で、ファン以外の人も足を止めてくれたりと、いつもと変わりない
ライブをしていました。そして夜の部が始まり、友人はいつものように写真を撮っていました。
そしてライブ後、家に帰ると友人から今日のライブの写真が送られてきました。
「オーブ撮れたよ」って…。

実は友人は”見える人”で、カメラも専門的にやっていた人なので、その丸い白いモノがほこりか
どうかの違いもよくわかるのです。
私は生まれて初めて、身近な人の写真に写り込んだオーブをまじまじと眺めました。
オーブは1cmくらいのものからAの頭をすっぽり覆う様な大きなものまでありました。

私はその日のライブを思い出していました。
そういえば、途中でAの喉がおかしくなって、しばらく咳が止まらなくなったり、変えたばかりの
ギターの弦が切れたり。
そして中断して歌を再会すると今度はBがジャンプした時に足をくじいたりと、ハプニングが続いた
夜でした。

私は2人に影響は無いのか聞いてみました。友人が霊感があるから撮れたんじゃないかとか。
友人は「戦国時代の浮遊霊が写り込んだだけで、2人に影響は無いよ。歌が楽しくて来たんだろう」と。
私はホッとして改めてBの痛めた足のあたりを見ると、その上にくっきりとオーブが重なっていたのを
見つけてギョッとしました。
                                     【完】