第27話 毘沙門天

著:蝉 ◆8sSemi/UG.  時刻:22:53:16

93 :蝉 ◆8sSemi/UG. :2010/08/20(金) 22:53:16 ID:tj45MlxL0
毘沙門天

知人のMさんの話。
Mさんはある日不思議な夢を見た。
「私はここにいるから助けに来て」そう声がして高速道路を擁した山の景色が見える。
目を覚ましたMさんは、とりあえずそこに行ってみることにした。

同じ町内でそれほど遠い場所ではない。山の裾で車を止め、高速道路のガードをくぐり山を登る。
しばらく登って夢で示された場所につくと、果たしてそこには朽ちかけたお堂があった。中には毘沙門天がお祀りしてある。
「ああ、私はこの毘沙門様に呼ばれたんだ。」Mさんはそう思ったそうだ。

そお堂は世話をする人が誰もいないらしく、そこらじゅう埃だらけでしばらく人が訪れた様子が無い。
お寺で頂いてきた毘沙門天の御札も三年分受けたそのままという有様だった。
このままではあまりにもったいないので、Mさんはその三枚の御札を返しにそれを受けてきたお寺に向かった。

さて、無事に御札をお返しして帰途についたものの、どうしてもお寺のある山を下りることが出来ない。
どこをどう走ったか、気がつくとお寺に戻ってきてしまっている。
出て、戻って、また出て。
寺に三度、—御札の枚数分—戻ることになったが四度目には無事下山することが出来たそうだ。