著:菊 ◆wNcSpqKeBg 時刻:00:00:55
- 142 :菊 ◆wNcSpqKeBg :2010/08/21(土) 00:00:55 ID:o7f7I/ys0
- 「繰り返す」1/2
職場の先輩だったBさんに聞いた話。
彼の地元には、投身自殺で有名な橋があるらしい。
私も一度だけ行った事があるが、橋の袂(たもと)に
たくさんのお地蔵様が並んでいたのをよく覚えている。
Bさんが大学生だった頃、いわゆるオカルト番組が全盛期だったらしい。
テレビでは心霊写真や恐怖動画なんかを頻繁に募集していて
『採用された人には賞金○万円!』なんどという煽り文句に
彼もいたく心そそられたそうだ。
どうにかして心霊写真・心霊動画が撮れないかと悩んでいた時
ふと、例の橋のことを思い出したという。
連休を利用して地元に帰省し、ビデオカメラを一晩
橋の袂(たもと)に設置しておいたそうだ。
- 144 :菊 ◆wNcSpqKeBg :2010/08/21(土) 00:01:36 ID:o7f7I/ys0
- 「繰り返す」2/2
「それで、撮れてたんですか?」
「撮れてたなんてもんじゃねぇよ」
聞いた私に、彼は酷く嫌そうな顔で答えた。
「バッチリ映ってた。何回も何回も、オヤジが飛び降りる姿が」
賞金はいただいたと、意気揚々とテレビ局に送ったものの
『こちらでは手に負えない』との理由で、ビデオテープは
彼の元に返ってきたらしい。どの番組に応募しても、結果は同じだったそうだ。
「結局、帰省やらビデオやら、余計な金がかかっただけだった
あのオヤジ、カメラ目線で飛び込みやがって。記念撮影じゃねーっての」
小父さんへの愚痴を零しつつ、彼は缶ビールを飲み干した。
オカルトなど微塵も怖れていないBさんは今、地元にある大手の葬儀社に勤めている。
宿直の夜には、それこそ“いろいろ”あるらしいが、手当てがつくので嬉しいそうだ。
【完】
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