第95話 嗤う蟲【ワラウムシ】

著:お宮さん  時刻:04:02:44

315 :代理投稿 ◆100mD2jqic :2010/08/21(土) 04:02:44 ID:9FhPPqS70
お宮さん 代理投稿

嗤う蟲【ワラウムシ】1/2  ※1行長すぎエラーを避けるため、代理投稿者が適宜改行を入れました。

私は、大学時代の夏休みすごく自堕落な生活を送っていた。といっても酒やタバコをやりまくったり、
ギャンブルに手を出したり、麻薬をやっていたというわけではない。しかし、昼夜の区別無く、
パソコンにかじりつき、食事も忘れて、ネットサーフィンやオンラインゲームをやっていたかと思うと、
お風呂にも入らずにベッドに倒れるようにして眠りに付くといったありさまであった。不規則な生活と
不摂生のせいで、体はひどくだるく、手足やほほの肉も落ちてきていて、体は少し熱を帯び、
咽が渇いても椅子から立ち上がるのが面倒なほどのものぐさで、家族からも「体に悪いし、いい加減に
したら」と言われていた。

ある明け方、疲れきった私が自室のベッドに横になり、ぼんやりと上の空で天井を見つめていると、
ベッドの脇でふっと黒いものが素早く壁をつたっていくのを見た。一瞬見るなり、中心より足が八方に
伸びている大きな黒蜘蛛と判断すると、手近に落ちていた参考書を壁に投げつけた。本は壁に当たり、
ガンと大きな音が響いたが、蜘蛛が潰れた跡などは壁にもどこにもなかった。蜘蛛がそこにいたのかさえ
定かではない。逃げた蜘蛛はベッドの下にもぐりこんだのだろうか、気持ち悪いなあと思いながら、
そのまま意識を失って眠ってしまった。

再び目を覚ましたころ、どうやら夕刻だったようだが、今度は枕元で異様なものを見た。黄色ブドウ球菌の
ように丸い球状のものが数珠のように連なって、尺取虫のように私の顔のそばを這っていたのだ。
目に浮いたゴミがそんな得体の知れないものに見えるのだろうかと、私は目をごしごしこすった。しかし、
見間違えではなかった。全長8cmくらいの、細い黄色い術が一本うねうねと這いながら、私の視界を
横切っていく。ありゃ、なんだ?と私は素っ頓狂な声を出してベッドから飛び起きたが、すでにその
異様な虫の姿は無かった。

316 :代理投稿 ◆100mD2jqic :2010/08/21(土) 04:03:19 ID:9FhPPqS70
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自堕落な夏休みが終わり、どうやら常態の私に戻ったころ、私は照明を消したリビングルームで一人
パソコンをしていた。その時、後ろの白い壁をごわごわと、崩れ乱れた毛糸のような影がじょりじょりと
這い上がっていくのを目撃してしまった。私は、今までのことがあり、見間違えじゃないかと思った。
私の家は、住宅街のマンションの6階で、そんな得体の知れない虫など見ることない。しかし、その影が
あまりにもリアルで、私が田舎に言ったときに目撃したゲジゲジにもよく似ていたため、隣の寝室で
くつろいでいた母親の所へ駆け込み聞いてみた。

「え?」「うーん」母は少し考えた後、ためらいがちに言った。
「今日、屋外で育ててた蘭を家に入れたんだよね……。それで、一緒についてたゲジゲジが中に入ったの
かもね……」

最後の話が、一番私を恐ろしがらせたのは言うまでもない。

【完】