第97話 無題

著:マン・コカスマ・ラミー ◆3Lv4KTTgPo  時刻:04:13:41

321 :マン・コカスマ・ラミー ◆3Lv4KTTgPo :2010/08/21(土) 04:13:41 ID:sOehEYqiO
どこの地域にでもよくある話しだけど、俺の地元にもお化けトンネルがある。

ある日友人と二人で車に乗り、お化けトンネルへと向かっていた。
俺は一度、そのトンネルで幽霊を見ているので確かにそこには出る。
俺が『絶対に出る』と言うもんだから、友人のKは張り切っていた。
トンネルに向かう道中、よほど楽しみなんだろう『どんな奴?どんな感じ?』と嬉しそうに聞いてくる。
俺が見たのはトンネルの天井から生える様に頭が出てきていたヤツだ。
俺の話しを聞き終えると助手席から後部座席に移動し、何やらゴソゴソとやり始めた。
『何してんの?』と聞くと
『うおぉ!!出来た!テンション上がってきたー!』と大声で喜びを表現しながら助手席に戻り
『幽霊とれるかなぁ…』とつぶやいた。
俺はカメラ持ってないので携帯をプラプラとさせながら『これで撮る?』と言うと、後部座席から虫カゴを取り出し『これで捕る』とニヤリッと笑う。
コイツ馬鹿だ!と思ったが、特に何も言わずに先に進む。

Kは幽霊を捕まえてからどうするかを色々言ってた気がするが、俺は コイツ馬鹿だ としか思わなかった。

そうこうしてる内にトンネルに着いた。Kは車から降り、後部席から3メートル位に伸びる様に加工し、お札付きの虫捕り網を取り出した。
『ウオォォー!一獲千金!!』と叫びながらブンブンと網を振り回す。
俺達は歩いてトンネルに入り、天井を眺めながら進んだ。
トンネルの中程に来た時、頭が見えた。俺達から見ると後頭部だ。
Kは網を振り回しながら走り出し『こっち向けゴラァ!』と叫び網を頭に被せようとした。
しかし、ガムテで巻いただけの継ぎ目がポキッと折れた。失敗だ。
しかしKは諦めない。一度車に戻り、車の屋根に乗って移動しながら、短い網で捕獲する事にした。
俺はKを屋根に乗せてゆっくりと走り出した。
トンネルの中程に来た時、Kは『ウワァァー』と叫びながら車から落ちた。
網は天井にぶら下がったままだ。
頭だけの霊は網の端を口にくわえると微動だにせず、Kを車の屋根から引き落とした様だ。
どうやら幽霊というのは予想以上に頑固らしいという結論になり、俺達は泣く泣く退散した。