第5話 無題

著:タヲル ◆XHr7yPORVM  時刻:21:23:55

21 :タヲル ◆XHr7yPORVM :2010/08/20(金) 21:23:55 ID:77R4z4th0
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今から20年くらい前の話し。
当時、ソープやらヘルスやらに出前持ってくバイトしてました。
そこで色んな出逢いもあったけど、怖い?話しをひとつ。

もうとっくに潰れてなくなっちゃったあるソープランドなんだけど、地下に女の子の控え室があって受付に断って直接渡しに行くんです。ハンバーグ弁当とかね。
裸電球にカビ臭い室内で、ノーブラキャミソール姿のお姉さんが2・3人アグラかいてタバコ吸ってたりして。
でね、部屋の隅っこで一人だけ黄色いバスタオル巻いたお姉さんがいるの。俺が行く度、いつも、山積みした座布団の隣に。
もう想像ついたと思うけど、その姉さん幽霊だったと思う。肌が、オレンジ色の電球の灯りの下でも土気色しててね、ず〜っと咳込んでた。



22 :タヲル ◆XHr7yPORVM :2010/08/20(金) 21:24:57 ID:77R4z4th0
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そのバイト辞めるまで、一度もその姉さんに弁当届けた事なかった。
例えば持ってく弁当が3個なら、控え室には必ず4人いた。タバコ吸ってる姉さんがたの隣で“これ見よがし”に咳込んでるのに、誰1人気にもとめない。
偶然だと思うかも知れないよね、俺もそう思うようにしてた。けど、ある日受付のお兄さんに挨拶してから控え室に行こうとした時、こう言われたのよ。

「お兄ちゃん、控え室誰もいないんだ。お客さんついたから。お金、テーブルに置いてあるって言ってたから、弁当とお釣り置いてって」

誰もいないって言ってた控え室に、やっぱりバスタオルの姉さんが正座して咳込んでた。真っ暗だった控え室の電気をつけたのは俺。
必死に気づかないふりをして、テーブルの千円札一枚と50円玉一枚(震えちゃってなかなか掴めなくて焦った)貰って、お釣り20円置いて逃げ帰った。

あのビルはまだあって、地下の控え室もなんらかの形で残ってるかも知れない。いまだに、あの姉さんはあそこでお客がつくのを待ってるんだろか? (終)