第6話 怒涛のラッパー

著:マン・コカスマ・ラミー ◆3Lv4KTTgPo  時刻:21:27:43

24 :本当にあった怖い名無し:2010/08/20(金) 21:27:43 ID:pt788zZQO
怒涛のラッパー


俺が前に住んでいた家は霊的な現象がよくあった。
家鳴りやラップ音の類いも頻繁にあったが、パキッやパンッとかの可愛い音じゃなかった。

一番恐ろしかったラップ音は、家で友人と二人で居た時だ。

その日、母が兄が入院している病院に泊まる事になり、一人きりで居るのが嫌な俺は友人のKを家に招き、2階の自室でテレビを見てダラダラしていた。
Kが夜食でも買いにコンビニに行こうぜと立ち上がった時、ラップ音が始まった。
まず玄関のドアを勢いよく蹴破り、廊下を走り抜け、食堂の椅子やテーブルを投げつけ食器棚が倒れてガラスや陶器が割れる音が聞こえた。
俺達は固まった。何事が起きたのか理解出来ない。
ただ何者かが相当な悪意を持ち、家を荒らしている事は想像出来た。

次にドン!ドン!と階段を踏み抜く程の足音をさせながら2階へ上がって来て、部屋のドアを乱暴に殴りつけたり蹴ったりしている。
俺達は椅子やテレビを持ち、身構えながらドアを見ていた。

ドアが壊れるかと思う程揺れた後、ドアノブが回り、少し開いた。
俺達は色んな物をドアに向かって投げ続けたが、向こうからは何の反応も無い。
Kが『ゴラッ!殺すぞ!』と大声で叫びながらステレオのスピーカーを担ぎ上げながらドアを蹴り開げた。
しかしドアの向こうには誰も居ない。警戒しつつも少し安心した俺達は2階の他の部屋も確認して回った。
2階には誰も居ない。
Kは『居てるんは分かってるんじゃ!殺すぞ!』と叫びながらゆっくりと階段を降りる。俺は背後を気にしながらKの後をついて行く。
食堂を覗き込んだKは『ホ?』と間抜けな声を出した後、俺を手招きして食堂に入っていく
食堂は荒れた様子が無く、いつも通り整然としていて、玄関も破壊されていなかった。

ここまで激しいラップ音は後にも先にもこれだけだ。