第22話 見えない池

著:マン・コカスマ・ラミー ◆3Lv4KTTgPo  時刻:22:40:22

82 :マン・コカスマ・ラミー ◆3Lv4KTTgPo :2010/08/20(金) 22:40:22 ID:pt788zZQO
見えない池

友達とツーリングに出かけると、金の無い俺達はよく野宿をしていた。
その日も長距離を走り、夜には疲れきっていたので緑地公園で寝ていたんだか、突然ザブンと大きな水の音と『助けて!』という悲鳴が聞こえた。

俺は飛び起き、友達のKをたたき起こした。
『ヤバい!誰か溺れてる』
するとKは怒鳴る様に『どこやー!今行くぞー!』と叫んだ。
バシャバシャと水の音と『助けて』と叫ぶ声の方に向かい、俺とKは走った。夜でも所々に外灯があり、周囲は良く見渡せる。
しかし池らしき場所が見当たらない。
声と水の音を頼りに駆け寄ると、そこは子供向けの遊具が並ぶ場所だった。
直径10メートル位の池の周囲を柵で囲っている。
その中でバシャバシャともがきながら時々頭を水面に出す者を見つけた。
Kに『そこ、柵の中!』と伝えると
『大丈夫や!』と叫んで柵を飛び越えダイブした。
次の瞬間、ドスン!という音とKの『ブホッ!』という声が聞こえた。
さっきまで池だった場所は子供用の砂場に変わっていた。
悲鳴も水の音も聞こえなくなり、慌てて周囲も捜索したが、やはり池は無かった。

翌日公園の案内図を見ると、俺達の居た場所からかなり離れた所に池があるのを確認したが、あれは確かに砂場から聞こえていた。
Kが飛び込んだ砂場を案内図で確認したら、猫が『タスケテー』と言っている落書きがあり、何故か笑えた。