第23話 言霊

著:のらはり ◆9N4nUN7jEY  時刻:22:41:57

84 :のらはり ◆9N4nUN7jEY :2010/08/20(金) 22:41:57 ID:6TdIf/VB0
『言霊』

あれは俺が今のアパートに引っ越したばかりの頃のこと。

その日は暑くてベランダの窓を開けて網戸にして寝ていた。
でも夜中やっぱり寝苦しくて一度目を覚ましてしまった。
そしてふとベランダの方を見ると、男が窓の外に立っていた。
暗くて顔以外よく見えなかったけど、中年くらいの男なのはわかった。

「まさか、泥棒!?」

そう思ってどうしようか思考をめぐらしていると、

「おい、開けろ。」

いきなり男がそう言ってきた。
しかし窓は開いているし、網戸にも特別鍵は付けていない。

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85 :のらはり ◆9N4nUN7jEY :2010/08/20(金) 22:43:11 ID:6TdIf/VB0
それでも男は

「開けろ!今すぐここを開けろ!」

と喚き立てきた。
それを見ている時にふと気付いた。
男は下半身がない、というよりも上半身だけが浮いている状態だった。
それがわかるともう訳がわからなくなって、そのまま意識が無くなった。



次の日の朝、起きてすぐベランダを見てみるともう男はいなかった。

「なんで昨日の男は部屋に入れなかったのだろう?」

と思っていると、ふと窓の枠に百均で売ってる「立ち入り禁止」と書いてあるステッカーが貼ってあった。
どうも一昨日の部屋飲みの際に友人がいたずらで貼っていったらしかった。
今思うと、そのお守りでもお札でもないステッカーの「立ち入り禁止」という言葉が、俺を救ってくれたのかもしれない。

(2/2)【完】