第25話 水かけババア

著:マン・コカスマ・ラミー ◆3Lv4KTTgPo  時刻:22:48:23

85 :マン・コカスマ・ラミー ◆3Lv4KTTgPo :2010/08/20(金) 22:48:23 ID:pt788zZQO
水かけババア

俺は夜中に探検するのが大好きだった。
オフロードバイクで獣道を走り、崖から落ちたり廃寺を発見したりで楽しんでいた。

その日、俺と友人はトラックにバイクを2台積み、ある場所を目指していた。数年前に見つけた場所だ。ただ詳しい場所は覚えていなかったが、一本道だから迷うはずはない。
民宿街の外れにある空き地にトラックを停め、バイクで出発。

車1台分しかない道を入っていくと、そのまま目的地までは分岐はおろか、待避するスペースすらない。
荒れた道を15分程進むと目の前に廃旅館が表れた。前回はここまででリタイヤした。
『よし、もっと奥行って何か面白いモン見つけようぜ』と、友人のKに言ったが、Kは『アホか!前のリベンジじゃ!』と、リュックからデカイ水鉄砲を取り出し俺に渡すと旅館の玄関まで続く階段をバイクで駆け上がって行く。
俺も水鉄砲を服の中に入れ後に続く。
『水鉄砲の水どうするん?これ空やん』と問うと
Kは『水かけババアの水を使うたったらええねん。そこらに無いか?』と水道をひねるがやはり水は出ない。
バイクで旅館の周囲や庭を荒らす様にグルグル回っていると、ポンプ式の井戸を見つけた。
ダメ元でポンピングしてみると赤茶けた水が出てきた。
Kは『やっぱり水は汚いのが一番や。』と嬉しそうに水鉄砲に入れていたが、俺が使う頃には綺麗な水になっていた。

水を充填した俺達は、以前 水かけババア が出た場所に戻りしばらく談笑していた。
そのうちにKが何かに気付いた。俺も耳を澄ますと パシッパシッ と杓(ひしゃく)で水を叩きつける音が聞こえた。
人ではない。幽霊なのか妖怪なのかは知らないが、Kのリベンジ相手 水かけババア が来たのだ。
ぼんやりと消え入りそうな姿で現れ『はよ帰り』と言いながら水を打ちつけてくる。
Kは前回これに喰らったのだ。
Kは『オラ!消してまうどボケェ!』と叫び、水鉄砲で応戦したがすぐに目詰まりして撃沈。
水かけババアは『はよ帰り』と俺にも水を叩きつけて消えてしまった。
水かけババアの水はかなり痛い。俺は腕がミミズ腫れになっていたが、応戦していたKは顔がパンパンに腫れるほどだった。
『水かけババアは幽霊とか妖怪と違うんやと思う。』
俺はそう言いながらKに水鉄砲を喰らわせた。