第30話 お化け屋敷

著:影虎 ◆OTL/VNUGLY  時刻:23:17:26

102 :代理投稿 ◆100mD2jqic :2010/08/20(金) 23:17:26 ID:NzwSnF7x0
影虎 ◆OTL/VNUGLY 様 代理投稿

【お化け屋敷】

昔一度だけ、当時彼氏だった夫とお化け屋敷に入った事がある。
夏が始まる前、6月の事だった。
オカルトは好きだがお化け屋敷は嫌いだと何度も言ったのに、
腕を掴まれて無理やりお化け屋敷に連れ込まれた。

案の定怖くて怖くて、私は目を開けられない。
夫の腕にしがみつき、眼をきつく閉じて、夫に手を引かれる形で進んでいく。
怖いながらも、そっと薄目を開けて辺りをチラ見した。
夫側の足元に井戸があり、そこから女の顏が半分ほど覗いている。
その様がとてもとても怖くて、またきつく眼を閉じた。

少し歩いてから、また、そっと井戸を見たら、中にいる女がこっちを見た。
眼ががあったその瞬間私は泣きだした。
何故かとても怖かった。心のどこかではロボットか人形だろうと思っているのに

夫が慌てて早歩きになり、程なく、寒かったお化け屋敷の中から、むあっとした
熱気漂う外に出た。
私はそれでもしばらく泣いていた。

帰りの車の中で夫が言った。
「泣き出す直前にあった井戸さぁ、蓋閉めてたら意味なくない?普通あそこでお
菊さんとかさぁw」
もう二度とお化け屋敷には入らない。

【完】