第34話 無題

著:カイト ◆MbiMEa9Ics  時刻:23:38:25

116 :カイト ◆MbiMEa9Ics :2010/08/20(金) 23:38:25 ID:r0WQmdB7O
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ある工事作業員からの話
国道○号線の近くを工事していた
ある時、シャベルカーの先が何か固いものに当たり、水道管かもしれないと手堀りに変更
スコップで掘ると、すぐにそれが出て来た

大量の骨、骨、骨……

秘密にしてあるが、その地区は土器や貝塚、人骨など縄文時代の遺物が沢山埋まっており、見つけると工事は中断になってしまう
その類いを見つけると、見なかった事にするのが常
けれどどうやら今回は違うらしい
「墓だな、これは」
監督がシャベルカーの先が掘り起こそうとしたものに気付く
墓石が斜めに埋まっていた
市役所に連絡すると、過去の地図を捜すからと言われてしまった
こうなると工事自体は出来ない
仕方なく、作業員は段ボールを近くのスーパーでもらって来て、その中に頭蓋骨やら大腿骨やらを詰める事にした
端から見ればただの野菜の段ボールだが、中身はといえば骨
結構シュールな光景だが、地域住民に不安は与えない
そんな作業を一時間ほどしていると、何故か現場に電力会社の人間が現れた
現場には全く関係ない人だが、監督に話しかけはじめた
いわく、近所のアパートに料金の徴収に来た
一ヶ月前に電気を止めると連絡したが、返事がなく今行って見ると郵便受けが凄い事になっていた
気になるので、一緒に見に来て欲しい
あまりの不安げな姿に、監督が頷いた時に市役所の人間も地図を持って登場
市役所の人間も何故か一緒にその家に向かう事になった



117 :カイト ◆MbiMEa9Ics :2010/08/20(金) 23:39:17 ID:r0WQmdB7O
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30分経ち、戻って来た
電力会社の人と市役所の人間は戻ってくるなり道端に吐き始め、監督も暗い顔で警察に電話をかけはじめた
どうやら孤独死の御老人を発見したらしい
「もっと早くに婆さん見つけてあげれたらなぁ」
「家族もいなかったのかねぇ、婆さん一人暮しなんてさ」
作業員数人が骨を拾いながら呟く
「お前ら、さっきから婆さん、婆さんって……。
なんで知ってるんだよ?」
確かに誰も作業員に腐乱死体がお婆さんであった事など告げていない
「監督達が帰って来た時、一緒にいましたよ。
ほらそこに」
誰もいない場所を指さす一人
「この骨の主につられたんですかね……」
風もないのに、ガタガタと段ボールが震えたのを見て、監督は直ぐさま酒と塩を買いに行かせた
「お茶が飲みたいらしいですよ」
その一言に、慌てて自動販売機に警備員が走るはめになった
市役所の四十年程前の地図には、工事をした箇所は墓場になっていた
道路を作る際に移転したはずが、まだ残っていたらしい


それからも、近くで事故は多発し、また孤独死の老人も二人発見された
工事現場の人間達は、まだ骨がそこに残っているだろうと予想はしているが、もはや掘り出そうとはしていない
「何箇所もあってきりがないからな」
そう言いながら、彼はため息をつく
「ただ、あそこは婆さんが守っててくれたらからな。
他だとそうはいかねぇよ」
どうやら俺の住む町は危険な埋蔵物が多いらしい