第72話 岩の謳(うた)う島

著:宿題終わったか ◆MflE5ZO0i6(宿題終わったか ◆ZzqpUXstowNJ,宿題終わったか ◆plQ1MzbtvQFA)  時刻:02:24:12

245 :宿題終わったか ◆MflE5ZO0i6 :2010/08/21(土) 02:24:12 ID:9FhPPqS70
【岩の謳(うた)う島】 1/2         代理投稿 ◆100mD2jqic

東京を南下すると、ひたすらに暑い島がある。周りには何もない島。
風が吹くと、岩が謳うといわれる島。
そこに入る事の出来る人間は限られる。交通手段の発達した現在ですらも。
なかなかに遠い島。先の戦にて、父祖が多く亡くなった島。
そこには今も回収しきれぬ遺骨が残る。そんな遺骨を守るかのように、
触れただけでも粘膜がはれ上がるトウガラシや、ファイアーアント、
本土の2倍以上はある、黒光りするGが生息している。

この島での約束、一つ目。
 宿舎に泊まるときは、寝る前に必ず水を扉の前においておく。
この島での約束、二つ目。
 島のものは、何一つ持ち出してはならない。
 島を出る前に、一粒の砂すら払い落としてから帰る。
この島での約束、三つ目。
 宿舎以外では、なじまないようにする。

一つ目の約束を破ったもの。
 夜中に、ざわめく音がする。衣擦れの音、歩調、靴音。
 そして、やがては全てが扉の前で止まる。
 慌てて水を供えると、ざわめきは収まっていくと言う。

二つ目の約束を破ったもの。
 本土に、戦争の遺物を一つ、記念に持ち帰った。
 家の全ての電化製品に異常が発生し、怪音が止まなかった。
 謝罪とともに、島に戻した所、以後、怪異は収まったと言う。

三つ目の約束を破ったもの。
 「彼」は、くぼ地を気に入っていた。サウナのようで、快適だという。
 あまり居つくなよ、と忠告され、笑って応えた。
 その後、くぼ地で亡くなっているところを見つけられたそうだ。

246 :宿題終わったか ◆MflE5ZO0i6 :2010/08/21(土) 02:25:06 ID:9FhPPqS70
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その島で、天候の悪くなった日、飛行機が着陸しようとしていた。
計器飛行は、有視界に比べると、難易度が高くなる。
すると。
高い所に、光が点る。誘導灯だろうか。高度を下げる。
滑走路灯が見えた。着陸。
到着すると、光が点っていた場所には、光を発するようなものも、
据えられるような場所も、なかった。

飛行機が離陸する時は、計算重量よりも、ちょっと舵が重たい感じがする。
目的地まで飛行し、着陸し、再度離陸すると、計算通りの重さを感じる。
「ああ、里帰りしたんだな」と、飛行機乗りは思うそうだ。


そして、今もなお、本土への帰郷を夢見て、彼らは眠る。