第74話 賽銭

著:歩兵 ◆T4kE1oY42E  時刻:02:34:23

251 :歩兵 ◆T4kE1oY42E :2010/08/21(土) 02:34:23 ID:cO4JpPB50
賽銭』(1)

俺の通っていた高校の正門前に当時
毎朝のように現れる人物がいた
汚い爺さんで、これまた汚いガットギターを抱えていて
そして聞いたこともない歌を、大声で登校して来る生徒に向けて歌うのだ(ちなみにギターは弾いていない)
あなたの住んでいた、もしくは、今住んでいる地域にもいないだろうか?いわゆるアレな人である
その爺さんは高校の裏にある、管理する人もいない古い神社に居着いていて、そこで寝泊りをしていたらしい
時には心ないDQNに住処を荒らされたりしたらしいが、近所では特に迫害されることも受け入れられることもない
そんな爺さんだった

252 :歩兵 ◆T4kE1oY42E :2010/08/21(土) 02:35:07 ID:cO4JpPB50
『賽銭』(2)

高校を卒業してから8年ほどたったころ
正月に地元へ帰省したときに高校の友達連中と飲む機会があった
そこで何気なしにギター爺(俺達はそう呼んでいた)の話題になった
「懐かしいなぁギター爺w」
「今何やってんだろうなぁw」
などと、まぁ当時の面白い出来事として話題に華が咲いていたのだが
地元に残って仕事をしているKという奴がポツリと
「死んだよ、殺されたらしい」
と言った
俺達は驚き、とりあえずKに詳しい話をしてくれと頼んだ
Kは「詳しくも何もないよ、殺されたらしい、犯人はまだ見つかってないらしいよ」と刺身をつまみながらそっけなく言う
俺達は「ど、ど、どういうふうに死んでたの?」とすっかり興奮をしてしまっていた
すると、Kはなんとも嫌そうな顔をしながら「賽銭箱の中に入ってたんだよ」と呟いた

253 :歩兵 ◆T4kE1oY42E :2010/08/21(土) 02:36:01 ID:cO4JpPB50
賽銭(3)

意味のわからない話である
賽銭箱の中に入る?人が?まあ殺されているなら死体か?
もちろん殺した奴が入れたんだよな?でもどこから入れたんだ?
上からは無理だよな、なんか格子みたいのがはまってるしなぁ
じゃあ横か裏に賽銭を取り出す扉が空いていて、そこから入れたのだろうか

俺はその旨をKに問いただしてみた
Kは答える「いや、横に賽銭取り出し口はあるんだけど人が入るような広さじゃないし、そもそも鍵が付いていたらしい」

「普通なら賽銭箱を壊して入れるしか無いんだよ」
「じゃあどうするんだよ」

「上から入れるんだよ賽銭みたいに、爺さんを細かく刻んでな」

「こうパラパラと」

「賽銭箱の中には爺さんがミッシリ入ってたらしいよ」