第84話 写真

著:きしりっしゅ ◆Ux29IdM5BI  時刻:03:23:32

286 :きしりっしゅ ◆Ux29IdM5BI :2010/08/21(土) 03:23:32 ID:sZhrIUxy0
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前行ってたバイトのおばちゃんから聞いた話。


おばちゃんがまだ若い頃、県外で就職してる妹さんが帰省してて、
家族で写真を撮ろうという話になったらしい。

言いだしっぺが親父さんで、
普段写真なんて渋る親父さんが撮ろうなんて言うなんて、
珍しいなあっておばちゃんは思ったって。

家族4人だったりお袋さんと二人とか妹と一緒とか親父さんひとりとか、
いろんなポーズでフィルム一本分撮りきって、
そのフィルムは妹さんが勤め先の近くに安く現像してくれるところがあるから、
現像できたら送るわねーと持って帰ったそうな。


その久々の帰省から半年もたたないうちに、
何と親父さんは急な病気で急逝してしまった。

余りに急な事でお袋さんもおばちゃんも妹さんもぱたぱたしてて、
フィルムのことはすっかり忘れちゃってたらしい。
思い出したのはもう49日もとっくに過ぎた頃だったって。
お父さんこうなるのわかってて、急に写真撮ろうとか言い出したのかしら、って、
おばちゃんとお袋さんは涙が出たって言ってた。

288 :きしりっしゅ ◆Ux29IdM5BI :2010/08/21(土) 03:24:47 ID:sZhrIUxy0
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それであの写真どうなったって妹さんに連絡したんだけど、
なんか妹さんがのらくら写真送るの避けてるような感じがすると。
お父さんが写ってる最後の写真だからっておばちゃんが説得したら、
妹さんがホントは見せたくないんだけどって、やっと写真送ってくれたんだって。

親父さんが写ってる写真、一枚もなかった。
ネガを確認してみたら、親父さんが写ってるはずのコマ(って言うのかな)が、
全部真っ黒になっちゃってたんだって。
そう言うフィルムを返してくれるのかどうかは知らないんだけど、おばちゃん嘘付くような人じゃなかったし。

多分なんか予感があったんだろうな、親父さん。


「完」