第92話 新聞

著:歩兵 ◆T4kE1oY42E  時刻:03:51:25

305 :歩兵 ◆T4kE1oY42E :2010/08/21(土) 03:51:25 ID:cO4JpPB50
『新聞』(1)

昔あるボロアパートに住んでいた頃
なぜか一週間ほど契約もしてない新聞が届いていた時期があった
「なんだ?こういう勧誘もあるのか?」くらいに思っていたのだが
とある朝、なんだか外が騒がしいので外に出てみると、警察官が大勢いた
「あ、隣の部屋に住んでいる方ですか?」警察官に尋ねられた
「はぁ、そうですが」
「実はここに住んでいるお爺さんが無くなってましてね」
「・・・」
朝からとんでもない話を聞かされるものだと思った
隣の老人とはたまに挨拶をするくらいでほとんど会話をすることもなかった
それにしても死んでいたとは
たしか独り身だったはずだ、世にいう孤独死というやつらしい


306 :歩兵 ◆T4kE1oY42E :2010/08/21(土) 03:53:05 ID:cO4JpPB50
『新聞』(2)
このままここにいても邪魔になりそうなので
部屋に戻ったはいいが、なんとなく落ち着かないでいると
一階に住んでいる大家さんの奥さんが訪ねてきた
「ごめんねぇ、なんかとんでもないことになって」
「いえ、ちょっと驚きましたけど」
「それにしても最近姿を見ないと思ったら、まさか死んでるなんてねぇ」
「はぁ・・」
「死んで一週間くらいなんですって、そういえばその頃から見ないと思ったのよ」
「へぇ・・」
誰かに話したくてしょうがないみたいだった
「・・・でね、新聞配達の子がね、若い子なんだけど、ウチに血相変えてきたのよ『なんか新聞受けの中から変な匂いがするんでけど』って」
「新聞も溜まってなかったし、まさか死んでるとは思わなかったって」
「え?新聞が溜まってなかったんですか?」
「そうなのよぉ、誰か持っていってたのかしらねぇ」
そこで話をする気が無くなった




307 :歩兵 ◆T4kE1oY42E :2010/08/21(土) 03:54:04 ID:cO4JpPB50
『新聞』(3)

後で聞いてみるとこのアパートで毎○新聞をとっていたのは、あの老人だけだったそうだ
そして、私の部屋に届いていた新聞も毎○新聞だった
若い新聞配達の子が配達する部屋を間違えたのか?
それはありえない、あの日もちゃんとあの老人の部屋に新聞を配達し、そして新聞受けから漏れる異臭に気がついたのである

それ以上は深く考えないことにした
ただ、あの早朝に新聞が差し込まれる「ガサッ」という音だけは忘れられない